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歯周病について 少し詳しく

歯周病とは

歯や口腔の健康は、食事や会話を楽しむなど、生涯豊かな生活を送る基盤となります。

現在、歯を失う最も多い原因として歯周病があげられます。日本人の多くがこの歯周病に罹患していると報告されています。歯を失うと、歯や口腔の健康だけではなく、全身の健康にも悪影響を及ぼします。今後、歯周病の治療ならびに予防の取り組みがより大切になってきます。

歯周病の定義

歯周病は、感染性炎症性疾患です。

歯肉や歯根膜、歯槽骨などの歯周組織において、歯周病原細菌が原因となり引き起こされます。歯肉退縮および咬合性外傷も歯周病に含まれます。

歯周病は生活習慣病として位置づけられ、食習慣、歯磨き習慣、喫煙、さらに糖尿病などの全身性疾患との関連性が報告されており、生活習慣の改善、自助努力、さらには医療連携などが必要になります。

歯周病の原因

歯周病の原因はプラーク(歯垢)です。歯磨きが不十分であると歯に付着した細菌が増殖し、多数の細菌とその代謝産物 から形成されるプラークが形成され、歯肉に炎症が生じます。炎症の程度は宿主の抵抗性などにより変化します。

さらにプラークが成熟すると異種細菌による共凝集が起こり、下図のような細菌バイオフィルム構造となります。

細菌による感染

歯周ポケットが深くなると歯周病原細菌が増殖し炎症を持続させます。歯周ポケット内は歯周病原細菌が増殖しやすい嫌気的な環境であり,細菌や有害な細菌代謝産物などが歯周ポケット上皮を通過して歯肉内へ入り込みます。慢性歯周炎では、P.ginigivalis、T.forsythia、A.actinomycetemcomitans、F.nucleatum および T.denticola などが歯周炎の活動部位に多く検出されます。このほかにも多くの細菌が歯周病との関連を疑われています。

歯垢や歯石の蓄積

プラークが長期間、歯の表面についているとき、唾液に含まれるカルシウムやリン酸がプラークに沈着して(石灰化)、石のように硬くなったものが歯石です。プラークは、およそ2週間で歯石となります。硬くてブラッシングでは除去が困難であるため、歯科医院で定期的に除去することが必要となります。

歯肉より上の歯の表面についているものを「歯肉縁上歯石(しにくえんじょうしせき)」といい、白っぽい色で比較的柔らかです。これは、唾液の中に含まれているリン酸カルシウムがついて形成されたものといわれています。歯周病が進行して歯と歯肉の溝が深くなったところにできるものを「歯肉縁下歯石(しにくえんかしせき)」といい、黒褐色でかなり硬く取り除きにくいのが特徴です。これは歯と歯肉の間(歯肉溝)からの浸出液の成分が含まれます。

歯石は、成分の約80%はリン酸カルシウムですが、そのほかにタンパク質、炭水化物や細菌の死骸などからもできています。歯石の表面がざらざらしているので、そこに細菌が増殖し歯周病を引き起こします。

歯石のもととなるプラークを除去するため、毎日のブラッシングは肝心です。しかしお口の中から、完全にプラークをなくすことは困難で、数か月程度で歯石が沈着してきますので、歯医医院で定期的に歯石除去(スケーリング)することも効果的です。

歯周病の症状

以下の症状が気になることはありませんか?

・口臭を指摘された・自分で気になる

・朝起きたら口の中がネバネバする

・歯みがき後に、毛先に血がついたり、すすいだ水に血が混じることがある

・歯肉が赤く腫れてきた

・歯肉が下がり、歯が長くなった気がする

・歯肉を押すと血や膿が出る

・歯と歯の間に物が詰まりやすい

・歯が浮いたような気がする

・歯並びが変わった気がする

・歯が揺れている気がする

歯周病の初期症状

歯肉の腫れ、ブラッシング時の出血、口臭などが歯周病の初期症状です。

歯肉の腫れや出血

磨き残しがある状態のまま経過すると歯の表面に細菌が付着し、歯ぐきが炎症を起こします。 炎症が強くなってくるとだんだん歯ぐきから出血するようになります。 炎症や出血が続くと今度は歯ぐきが腫れたり歯ぐきから膿が出るようになります。

口臭の発生

口臭は消化器、呼吸器疾患なども含めて多様な病態で発生しますが、大部分は口の中に原因があり、その多くは舌苔に付着した嫌気性菌や歯周病です。口臭の主要原因物質は揮発性硫黄化合物である硫化水素、メチルメルカプタン、ジメチルサルファイドです。

これら揮発性硫黄化合物は、口の内に生息している嫌気性菌が唾液・血液・剥離上皮細胞・食物残渣中の含硫アミノ酸を分解・腐敗することで産生されます。

他に糖尿病などの全身疾患に関連する特徴的な口臭もあります。

歯周病の進行症状

健康な歯肉は薄いピンク色をしており、歯肉が引き締まっています。ブラッシングでは出血しません。

歯肉にプラークが付着すると、初期の段階として、歯肉炎が生じます。炎症を起こした歯肉は赤色になります。

歯茎が腫れたり、ブラッシング時に歯茎が出血します。

歯肉炎が進行し、歯周炎の段階になると、

歯肉の色は赤紫色になり、歯と接している歯肉が更に腫れてきます。ブラッシングで出血や膿がでます。

歯周ポケットが深くなり歯槽骨が溶けるため、歯と歯の間が広がり、食べ物もよく詰まります。

歯肉が退縮して歯が長く見えます。

歯肉の後退

歯根の表面が露出した状態のことをいいます。

原因としては歯周炎や加齢、誤ったブラッシングなどによって生じます。

歯根の表面はエナメル質に比べ柔らかく、虫歯になりやすく、また歯の神経に刺激を伝えやすい部分ですので、 知覚過敏を生じることがあります。

歯の動揺

歯は歯根膜を介在し、歯槽骨に植立しています。

そのため、正常な歯でもわずかに動きます。

しかし歯周病により、歯を支える骨が失われてしまうと、歯がグラグラ動揺してきます。そのため、歯の動揺の程度は歯周病の進行の指標の1つにもなります。

歯が動揺すると食事時に噛むと痛いという症状が出てきます。

歯槽骨の破壊

歯周病原細菌は直接的、あるいは免疫系に関与し、破骨細胞の形成を促進します。また、歯周炎が生じている部位に、歯ぎしり、食いしばりなどの噛み合わせの強い力がかかると、歯槽骨の吸収を加速していきます。

歯周病の治療方法

治療は歯周病の診断結果に基づき、治療内容が決まります。もちろん、歯周病の重症度により治療方法や治療回数は異なります。

歯周病の診断方法

歯周組織検査などをもとに、歯周病の分類に沿って診断していきます。

はじめに、歯周病の原因が、細菌性プラークによるものか、外傷性咬合の影響によるものか、全身性因子の影響によるものか、生活習慣の影響によるものかを大まかに把握します。

次に、1 歯単位の診断をふまえ、歯肉炎か歯周炎かを決定します。

歯周炎であれば、緩慢な進行の慢性歯周炎か、急速な進行の侵襲性歯周炎か、また遺伝疾患に伴う歯周炎かを診断します。

歯周ポケットの測定

歯と歯肉との隙間に、歯周病でない方にも2mm程度の歯周ポケットがあります。歯周病になればこの歯周ポケットが深くなります。

歯周ポケットは歯周病の重症度の判定に用います。

画像(X線)検査

デンタルX線画像もしくはパノラマX線画像を基本とし、必要に応じて両者を組み合わせたりします。

また,歯科用CTは歯周組織の三次元的構造を検査することができることから,骨欠損形態や根尖病巣との関わり、上顎洞への影響などを知るうえで優れた検査法となります。

歯垢や歯石の除去

歯周治療のなかでプラークや歯石の除去は、きわめて重要な処置になります。歯に付着した歯茎の上および歯茎の中に潜り込んでいるプラーク、歯石を専用の器具を用いて機械的に除去していきます。

歯周病治療の手順

歯周病の進行の程度により処置内容や処置回数の変更があります。

以下基本的な処置の流れとなります。

1)歯周基本治療

   患者さんご自身で日々のプラークを除去する(ブラッシング指導)、歯茎の上についている歯石や、歯茎の中に入り込んだ歯石の除去、プラークがつきやすい原因となっている部分の解消、噛み合わせが強いところがあれば調整する、グラグラしている歯の固定、などからなる原因除去を行います。

2)歯周基本治療後の再評価検査

 再評価時の検査は、初診時の歯周病検査と原則的に同じ内容で行い、両者を比較検討することにより、歯周治療に対する歯茎の反応と正確な病状を知り、予後の判定と治療計画に役立てます。

3)歯周外科治療

 歯周基本治療を行っても、4 mm 以上の深い活動性の歯周ポケットが残存している場合や、歯周病により破壊された歯周組織を再生したい場合には歯周外科治療を検討します。

4)歯周外科治療後の再評価検査

 歯周外科治療を行った後、再び必要な検査を行い、治癒の状態を評価します。

5)口腔機能回復治療

 歯周基本治療、歯周外科治療の後に、口腔機能の回復を行うために差し歯、ブリッジなどの被せ物や、義歯(入れ歯)、インプラントが必要となります。

6)メインテナンス

 歯周病は再発しやすいので、「治癒」状態でも定期的なメインテナンスは必須です。メインテナンスは,歯周組織が健康を回復した状態を長期に維持させるために、患者さんが行うセルフケアと歯科医院でのプロフェショナルケアからなります。

歯周外科手術

歯周外科治療には組織付着療法、切除療法、歯周組織再生療法及び歯周形成手術など目的により術式が選択されます。

歯茎をめくり、深い場所についている歯石をとったり、歯槽骨の形態を整えたりします。

歯周病治療における注意点

 歯周病治療で注意していただきたいことは、歯周病に完治はないということです。再発しないために今の状態を維持していくことが重要となります。

治療後のケア方法

治療後に毎日のご自身での歯磨きとフロス等を用いて、ケアを続けていただくことは非常に大切です。

定期的な歯磨きの重要性

歯周病の再発予防で大事なのは、日々歯に付着してしまうプラーク(歯垢)を、歯ブラシやフロスを用い、ご自身で丁寧に除去することなのです。

1日3回食後にブラッシングを行い、夕食後に必ずフロスや歯間ブラシによる清掃を実施していただくことは重要です。

口臭対策の方法

先ほど述べたように、口臭の原因には舌苔に付着した細菌と歯周病があげられます。歯磨きとともに、適切な舌磨きも重要になってくることを、忘れないでくださいね。

歯周病の再発予防の考え方

メインテナンスは,再評価検査で「治癒」と判定された患者さんに対して,再発を防止するために行う管理のこととなります。

定期的な歯科検診の受診

メインテナンスは、歯周病再発の予防、新たな歯周病発症部位の早期発見、良好な歯周組織環境の長期にわたる維持となります。

歯科医院への定期検診の期間は患者さんの歯周病のリスクや状態により異なります。各種の検査情報や行われた治療などからリコール間隔を決定します。メンテナンス方法の考え方を以下に紹介します。

口腔内清掃の実施

メンテナンスの内容は、モチベーションが維持されているか、また適切なセルフケアが行われているかを確認し、必要に応じて機械的歯面清掃、歯石除去を行います。PMTC は重要な位置を占め、フッ化物塗布などによる歯質の強化と,プロ フェッショナルケアによるプラーク除去で、より良好な口腔衛生環境を提供することができます。

さらに、患者さんのさまざまな生活環境や口腔内の状態、リスクファクターなどを把握し、生活習慣の変化に対する提案を行うことができます。 糖尿病などの全身性疾患をお持ち場合には、血液検査のデータの確認を行いながら、良好な口腔内環境を維持するために口腔衛生指導を中心とした管理を行っていきます。

歯周病治療の場合の注意点

治療の適切なタイミング

予防が一番重要です。歯周病は進行してからでないと症状を感じにくいため、症状が出ていないなるべく早い段階での歯科医院受診が理想的です。

治療費用について

保険治療が可能です。保険診療の決められた流れに沿って受診していただく必要があります。

歯周病の基本治療ではまず、歯周病の状況を把握するための検査を行います。

初診時は、初診料に加えレントゲン撮影代と歯周検査、スケーリング費用等がかかります。歯の本数により費用は変わりますが、3割負担なら概ね3,000~4,000円程度に収まることが多いでしょう。

当クリニックの歯周病治療について

当クリニックの歯周病治療について

歯周治療の提供はもちろんのこと、歯周病の状態はお身体の状態に密接に関わっているため、糖尿病、不整脈、心疾患、ステロイド療法、周術期治療を受けていらっしゃる患者様へ適切なケアをご提案することができます。

最新の治療方法の導入

CBCTにて歯槽骨の状態の確認ができます。またパナソニック製細菌カウンターにて口腔内の細菌数の変化を測定できます。

エアフローといった機械を使用し、従来より短い時間で歯により優しく、着色やプラークをとっていくこともできます。

患者様に合った治療方法のご提案

一例として、糖尿病を有する患者さんに対して、HbA1cの数値を把握しながら、状況に応じた口腔ケア提案を行うことができます。周術期の患者さんにはお身体の治療中に予測される口腔内の不安事項をなるべく減らしていけるような、治療計画やケアの提案を行います。

一番重要なこととして患者さんのお身体の状態を把握し、またお話を伺いながら歯周治療を進めていきたいと考えております。

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